生誕120年を迎える小津安二郎の代表作を上映会してみませんか。

 

日本の誇る映画作家、小津安二郎が生誕して120年になります。1903年(明治36年)生まれの小津安二郎は、戦前のサイレント時代からトーキー時代、さらに戦後の日本映画全盛期の3つの時代を牽引してきた日本映画界の巨匠です。とくに後期における唯一無二な独自の映像スタイルは、日本だけでなく、海外の映画作家にも大きな影響を与えました。

戦後における後期の小津作品は、復興期から高度成長期にかけて、日本の家制度が崩壊し欧米型の家族へと大きく様変わりしていくなかで、日本的な家族の姿が、またはその家族の紐帯が失われていく様を哀惜をもって描いています。後年、小津は何度もこのテーマを反復することになりますが、そこには独身を貫き母と長く暮らしてきた小津安二郎の抱えていた、家族の紐帯の喪失への不安と深い悲しみが横たわっているように感じられます。

また昭和20年代から昭和30年代前半の日本の姿が描かれている作品群を通して、昔の日本を追体験できるのも小津作品の大きな魅力のひとつです。フィルムに刻み込まれた戦後の飾らない日本人の姿や素朴な風景、またテクノロジーの進化によって身体性を失ってしまった現代とは異なる等身大の生活の姿は、若い年齢層にとって、日本の文化を学び直す有効なコンテンツになると考えられます。

Bunkidoでは、小津安二郎が自身のスタイルを確立した後期の代表作を多くご用意しております。120周年にあたるこの機会に、ぜひ小津作品の上映会をご検討いただければと思います。料金設定も安価に設定しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

東京物語

(1953/11/03公開/136分/白黒)
監督: 小津安二郎
撮影: 厚田雄春
出演: 笠 智衆、原 節子、杉村 春子

日本映画史に燦然と輝くマスターピース

云わずと知れた小津安二郎の代表作。欧米からも極めて高い評価を得ている。親元を離れ未来に向かっている子供たち家族の姿を見ながら、いずれ訪れる別れの日を意識する老夫婦の姿を通じ、戦後の著しい変化により旧来の日本家族の姿が喪失していく様を寂寞たる思いで描いた傑作。

小津安二郎監督『東京物語』
小津安二郎監督『東京物語』

 

 

晩春(1949/09/13公開/108分/白黒)
監督: 小津安二郎
脚本: 野田高梧、小津安二郎
出演: 原 節子、笠 智衆、月丘 夢路

小津、原節子コンビの初作品、父親の悲哀を描いた名作

小津スタイルを確立したと云われる作品。「娘を嫁がせる初老の親の悲哀」というモチーフは、本作以降最後の作品まで何度も反復される。ローアングルや人物ショットの独特の切り返しなど小津独特のスタイルはこの作品で確立された。1949年キネマ旬報ベスト・テン第1位。

小津安二郎監督『晩春』

麦秋(1951/10/03公開/124分/白黒)
監督: 小津安二郎
撮影: 厚田雄春
出演: 原 節子、笠 智衆、淡島 千景

新しい時代に大家族が離散していく姿を描いた傑作

新しい時代となり女性の役割も変わっていくなか大家族が離散していく様を描く。日常的なユーモアを織り込みながらも、その無常さを綴った小津安二郎の傑作。小津ファンの間でもこれをフェバリットに挙げる声も多い。1951年度キネマ旬報ベスト・テン第1位。

Setsuko Hara (Noriko Mamiya), Chikage Awajima (Aya Tamura), personnage, Kuniko Igawa (Takako)

小津安二郎監督『麦秋』

お茶漬けの味(1952/10/01公開/115分/白黒)
監督: 小津安二郎
脚本: 野田高梧、小津安二郎
出演: 佐分 利信、木暮 美千代、鶴田 浩二

小津安二郎が軽妙に描くコミカルなホームドラマの名作

良家出身の妻といつも妻に馬鹿にされても自分のやりたいように振舞っている夫。倦怠期を迎えたこの夫婦を中心に、彼らを取り巻く人々の人間模様を、ユーモアをもって軽妙に描いた作品。淡島千景や津島恵子の美貌と共に若かりし頃の鶴田浩二も楽しめる。